舞台の上。白い屋根の家の中で、魔理沙が首を抱えて立っている。その顔はとても嬉しそう。 子供――いや、赤ん坊が欲しい物を手に入れたかのように、純粋無垢な笑みを顔面に貼り付けている。 相対するのは――首のない誰か。もはや肉の塊でしかないそれは、誰かと呼ぶのもおこがましい。 切られ焼かれ抉られた肉の塊。アリスだったのかもしれないし、例えば霊夢だったのかもしれない。 あるいは霖之助であったのかもしれないし、もしかしたらパチュリーであったのかもしれない。 だが何であれ今は肉の塊でしかないのだから、それを議論し結論づける必要性は何処にもない。 「どうするのよ、それ」 ぎゅっと首を抱きしめる魔理沙に、肉の塊が話しかける。 「わかんない」 シンプルな答えを返す魔理沙に、肉の塊はやれやれと肩をすくめる。 「どうせすぐに飽きて捨ててしまうと思うよ、僕は」 「私もそう思うわ」 「私も。もったいない」 肉の塊は呆れ顔だ。辛辣な肉の塊の言葉に、魔理沙はぷくぅと頬を膨らませる。 「捨てるわけないだろ、大好きなものを集めて作ったのに。ほら」 眉を歪ませた魔理沙が手に持っていた首を肉の塊につきつける。よくみれば、その首の顔はつぎはぎだらけだった。 「どうせならもっと上手につなげなさいよ」 首に生えた金色の髪の毛が文句を呟く。 「昔から魔理沙はこういう細かい作業はそう得意じゃなかったからね」 昔を懐かしむように、首の眼球が呟く。 「だからってもっとこう・・・・・・ねぇ?」 首の耳が不満気に呟く。 「私は嫌いじゃないけどね、こういうのも」 首の鼻がふふん、と得意げに呟く。 「もう! うっさいな! 私はこうが一番好きなんだ!」 首の口が怒って叫んだ。 暗転。黒子が舞台を片付ける。客は満足そうな顔で外へ出る。 外には星空、真っ青な星空。そこが次の舞台。キラキラと星は客に目掛けて落ちていく。 轟音、爆発、焼失。客は首意外を残して燃え尽きる。 「まぁるいのがいいなぁ、まぁるいのがいいなぁ」 一人の客が笑いながら呟くと、他の客もそうだそうだと騒ぎ出す。だが落ちてくるのはごつごつした岩。 役者が客のいうことなど聞くはずもない。期待を裏切るからこそ役者なのだとぷんぷんと怒りながら星は落ちていく。 「これが貴方の望んだ世界?」 その光景を見ていた紫が呟く。その問いか星へか自分へか。虚ろな目は何も見ていないからそれは永遠に分からない。 「きっとそうよ、きっとそう。だってそうなのだから」 隣で寄り添う幽々子が叫ぶ。その顔は亡霊なのに酷く醜く爛れている。 二人はとても幸せそう。お互いがお互いを認識できていないけれど、すぐそばにいると信じているから。 ふと、突然星の落下が止む。客の一人だったさとりは怪訝そうな顔だ。 「次はどうしたのよ早くしなさいよ」 星空に向かってさとりが叫ぶ。 「満足か? なぁ、満足か?」 魔理沙のその問いに誰も答えない。だって誰も答えられないもの。分からないから。死んでいるから。 星空に浮ぶ魔理沙が、答えが無いことに満足して――地上に憧れて落ちていく。 あとがき ごろごろごろごろ。いわゆるナンセンス。